fc2ブログ

たまにはなんか書かないと文章力がこれでもかと落ちるよね。

「雨降ってるな」
 しかもかなりの土砂降りだ。自分の置き傘を手に取り、外へ出る。
「あっちゃー、カサ忘れちゃった」
 恋人である××は、カバンの中を漁りながら傘がないことに気付いて苦笑い。
「おう、じゃあ一緒に差すか?」
「え、あ、うん……」
 折り畳み傘ならそれもできなかったろうが、俺の傘は丁度二人分が入れるほどの大きさだ。
「俺達恋人同士だろ?」
「……」
 一瞬、××の顔に翳りが見えた。ちょっと気になるが、俺は彼女を濡らさないよう傘を寄せて歩き出した。
「ずるいよ、××ちゃん……」
 俺達二人は、その声にドキッとして足を止める。
「なんだ? △△」
 俺の幼馴染がずぶ濡れで目の前に立っていた。
「○○君のこと、傍でずっと見てたのは私なのに……どうしてあとから割り込んできた××ちゃんが○○君の彼女になっちゃったんだろうね?」
 ××は沈黙した。その代わりに、俺が答える。
「ごめん、△△。××のことを好きになったのは俺だし……××が割り込んだわけじゃなくて、俺が振り向いてほしかっただけだから……。ずっと前からそうだったし」
 事実なのにまるで言い訳臭くて変な感じだ。胸の辺りに何かが詰まっているような。
「じゃあなんで○○君は私のことを好きになってくれなかったんだろうね?」
「それは……」
「傍にいたはずの私を好きにならずに、どうして××ちゃんを好きになっちゃったの?」
「俺にとってお前は、俺の家族みたいなものだったから……ずっと傍にいたぶん、そういう感情になったんだ。恋愛の好きとは違う感情だ」
 確かに、△△はずっと俺の傍にいた。俺の朝食を作り、俺と一緒に登校し、俺と一緒に遅刻して、俺と一緒に授業を受け、俺と一緒に帰宅する。それを長年続けてきたにも関わらず、俺は××を好きになった。
「違う……××ちゃんが存在したから。××ちゃんさえいなければ、家族みたいなのとは違う感情が生まれていたはず」
「それは……そうかもしれないけど……××がいなければ、今の俺はなかったはずだ。××がいたから、俺はY大学の受験に踏み出せたし――」
「そんなことない!! 私が、私がもっとあなたに踏み込んでいれば××ちゃんがいなくても……」
「そんなこと……言うなよ。行こう、××。これ以上話しててもこいつには通じそうもない」
 俺達は、雨に打たれ続ける△△を尻目に、逃げるように去る。
「――よ」
 すれ違いざま△△は何かを呟いたが、それは雨の音でほとんど聞き取れなかった。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

アクセスカウンター
累計: 検索エンジン登録はUNFINISHED 本日: SEO対策はUNFINISHED 昨日: メール配信はUNFINISHED   アクセスアップはUNFINISHED

FC2プロフ
ツイッター
最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
検索フォーム
QRコード
QR
月別アーカイブ
最新トラックバック